CCBスタンダード

気候・地域社会・生物多様性プロジェクト設計スタンダード

 

多面的便益をもたらすプロジェクトの設計ツール

世界は今、気候変動、貧困の拡大、生物多様性の喪失という問題に直面しています。これらの問題には関連があります。気候変動対策を賢く設計すれば、関連する他の問題の解決策にもなりえます。一方、地球規模の問題について統合的なアプローチを取ることが求められているものの、どうすれば良いかという具体的なガイダンスは乏しいのが現状です。気候・地域社会・生物多様性スタンダード(CCBスタンダード)は、多面的便益をもたらすプロジェクトの設計を支援する目的で作られました。

策定の背景と経緯

「植林事業はすべて良いのか?」「どうしたら質の高いプロジェクトを広められるか?」気候変動対策として森林が注目される中、このような疑問も提議されてきました。複合的な便益をもたらす土地ベースのプロジェクトを推進するような政策や市場の形成を目指し、Climate, Community & Biodiversity Alliance(以下CCBA)は2003年に組織されました。

CCBAはまず、幅広いステークホルダーの意見を得ながらCCBスタンダードの案を作成しました。続いて、世界各地のプロジェクトで有効性を検証し、研究機関(ICRAF、CATIE、CIFOR)のレビューを受けました。異なる環境下にある具体的なプロジェクトでテストすることで、スタンダードの汎用性を高めました。こうして、CCBスタンダード第1版は、2005年5月に発表されました。

また、CCBスタンダードのカーボン市場での評価が高まってきたことと、森林減少・劣化からの二酸化炭素排出削減(REDD)についての政策議論が進んできたことを背景に、2008年2月から、改定作業が始まり、2回のパブリックコメントを経て、2008年12月6日に現行の第2版が発表されました。

CCBスタンダードの構成

CCBスタンダードには、総合、気候、地域社会および生物多様性の4つのセクションがあります。総合セクションでは、①プロジェクトが実施される前の土地の状態、②ベースラインの設定、③プロジェクトの設計と目標を説明し、④管理実行能力と⑤法的な堅実性を証明することを求めています。気候、地域社会および生物多様性の個別セクションでは、それぞれの分野で、①プロジェクト地域内で差し引きプラスの効果があること、②プロジェクトが地域外へ及ぼす悪影響やリーケージの評価と対策、③それらのモニタリングの方法と体制について、説明を求めています。これらの「基準」について、客観的な評価のためと具体的な対策を誘発するために、「指標」が設けられています。

これらの基準を全て満たすことが認証の条件となります。さらに、オプションとして、①気候変動への適応対策、②貧困対策、または③生物多様性の保全対策として、特に優れているプロジェクトには、ゴールド認証が与えられます。必須の基準と同様、オプションの基準にも指標が設けられています。

認証プロセス

プロジェクト企画者が提出する計画書(PDD)をもとに、独立した第三者機関が審査を行います。同時に、PDDがCCBAのホームページに掲載され、パブリックコメントが実施されます。寄せられたコメントは公開され、審査プロセスにも取り込まれます。ドラフト評価書では、基準を満たすのに不足な点や不明瞭な点が指摘され、それらについて対応が求められます。CCBスタンダードは、プロジェクトに複合的な便益をもたらす内容の取り込みを促すことを大きな目的としているため、不足な点を修正するために十分な機会が与えられます。その後、最終評価書がまとめられ、CCBAで認証の可否が判断されます。

認証されたプロジェクトについては、第三者機関による評価書までも公開されるため、審査の透明性は極めて高いといえます。

世界各地のプロジェクト

認証プロジェクトと、審査中のプロジェクトは、CCBAのホームページにPDDが掲載されています。CIがトヨタ自動車とフィリピンで実施しているプロジェクトは、2009年末にゴールドレベルの認証を受けています。この他にも、日本企業が支援するものも含み、CCBスタンダードを使って設計されているプロジェクトが多くあります。

CCB認証は、途上国のプロジェクトに限らず、イギリス、アメリカ、オーストラリアでプロジェクトがある他、日本国内の森林整備にも適用の可能性があります。日本特有な状況を活かしながら、そのプロジェクトの気候、地域社会、生物多様性面における効果を、国際基準を通じて説明し、評価を受けることは意義深いといえるでしょう。

ボランタリー市場では、CCB認証を受けている森林由来のプロジェクトを好む投資家が多く、プレミアム価格を支払う傾向も報告されています。森林カーボンのプロジェクトの資金獲得において、CCB認証が必要条件のひとつになりつつあります。

企業のCSRの視点からも、CCB認証は効果的です。第三者がプロジェクトの質を証明することは、企業イメージの向上と広報効果を高めると考えられます。