CIジャパンは、国連大学サステイナビリティ高等研究所 (UNU-IAS)と共同で、OECMプロジェクトを進めています。OECMは「Other effective area-based conservation measures」の略で、「その他の効果的な地域ベースの保全手段」と訳されます。「社会生態学的ランドスケープ・シースケープ(SEPLS:Socio-ecological production landscapes and seascapes)という、地域ベースの保全概念が、生物多様性条約で合意された「30 by 30」を達成するためのカギであることから、この新しいメカニズムがどのように目標の達成に貢献できるか分析し、より深い理解と共有を目的としています。
ポスト2020生物多様性枠組とOECMs
生物多様性条約締約国は、生物多様性戦略計画(2011-2020)の期間終了に伴い、ポスト2020生物多様性枠組の策定に向け、話し合いを進めています。地域保全に関する目標では、2011-2020年戦略計画もポスト2020年枠組案も、「保護区及びその他の効果的な地域保全手段」という表現を用いて、ある一定の割合の面積を保護することを目指しています。
この文言を踏まえて、生物多様性条約の締約国や運営委員会は、「その他の効果的な地域ベースの保全手段」(OECMs)の意味を探り、そのような手段が生物多様性政策においてどのように考慮されるか検討する政策プロセスを継続的に行ってきました。OECMs を特定するためのガイドラインと基準は、国際自然保護連合(IUCN)が率いるチームによって作成され、CBD が認めたOECMs の定義、すなわち「保護区ではない、しかし、地理的に定義された地域で、生物多様性保全に前向きかつ持続的な成果をもたらす方法で統治・管理されており、生態系の機能とサービス、文化、精神的世界、社会経済、その他地域に関連する価値を伴う地域」が含まれています。OECMsになり得る場所として、例えば、企業緑地や社寺林、ため池などが挙げられます。
社会生態学的ランドスケープ・シースケープ(SEPLS :Socio-ecological Production Landscapes and Seascapes)
SEPLSとは、SATOYAMAイニシアティブで使われている用語で、人の利用と自然生態系の相互作用によって、生物多様性が維持・強化され、同時に人間の福利に必要な財やサービスが提供されているランドスケープやシースケープのことを指します。持続可能なランドスケープの管理は、多くの場合、生息地や土地・海の利用が生物文化的にモザイク状になることが研究により明らかになっています。コンサベーション・インターナショナルは、2010年SATOYAMAイニシアティブとのパートナーシップを開始して以来、SEPLSのコンセプトを保全に生かすために取り組んできました。このコンセプトは、持続可能なランドスケープとシースケープに関するCI独自のプログラムと多くの共通点を持っています。
OECMプロジェクトの紹介
私たちは、ランドスケープアプローチと OECMs に関する理解をさらに深め、生物多様性条約締約国が OECMs を指定・管理するのを支援することを目的としたプロジェクトを開発しました。最終的にランドスケープとシースケープの持続可能性と回復力を向上させ、生物多様性と地球規模の持続可能性を求める政策における、生産的ランドスケープの重要性を認識するという長期的目標に向けて貢献することを期待しています。
OECMプロジェクトには以下のようなコンポーネントが含まれます。
- OECMとその関連事項の情報収集
OECMの政策とCBDやその他の国際会議の実施プロセス会議に関する情報を収集する。
- エキスパートダイアログやイベントの開催
OECMの主要な専門家を招き、OECMsとSEPLSの関係、生産的ランドスケープとシースケープがOECMsとして認められる可能性、CBD締約国の知識と資源に関するニーズ、関連事項などを検討するために、一連の専門家対話会議が開催しています。
- 調査業務
本プロジェクトでは、政策概要、学術論文、OECMの特定と管理に使用する指標ベースのツールの調査など、ランドスケープアプローチとOECMに関する研究成果を作成します。
- アウトリーチ活動
プロジェクトの成果や知見は、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)との連携などを通じて、対外発信されます。