国連 気候変動会議

 

国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC-COP 28)が、2023年11月30日-12月12日の日程で、アラブ首長国連邦のドバイで開催されます。

約200カ国から代表が集まり、パリ協定の目標達成に向け、気候変動問題に対する世界的な野心の向上と各国行動の加速化を目指します。

 
 

コンサベーション・インターナショナル COP28 ポジションペーパー >>
COP28 サイドイベント情報一覧 >>

現地プレス担当
Jessica Brown
, Senior Director of Media Relations
jbrown@conservation.org

 
 

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP-28 )、ドバイ

気候変動枠組み条約事務局HP

締約国会議(COP)とは、1992年に採択された、国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)の197か国におよぶ締約国による年次会合。アラブ首長国連邦のドバイで開催される今年の年次総会は、気候変動問題という、共通の目的を解決するために集まる28回目の会議である。

今年の国連気候変動会議は、パリ協定の目標達成に向けて、抜本的な行動の改革の必要性に焦点が当てられます。今年9月に発表された、気候危機への世界的な対応を評価したグローバル・ストックテイク報告書では、各国が気候目標を達成するための軌道から大きく外れていることが指摘されました。そうした中、COP28は、報告書で提言された、すべての部門での排出量を大幅に削減し、世界全体の投資のうち何兆ドルもの資金を低排出で気候変動に強い開発にシフトさせる行動を加速する重要な機会となります。

世界はすべての分野で温室効果ガスの排出を急速に削減しなければなりません。壊滅的な気候被害を阻止するために必要な、2030年までにネット・ゼロ社会へと移行するためには、自然の潜在力を最大限に活用することがカギです。自然に基づく気候解決策(NCS)は、各国と国際社会が気候変動を緩和し、適応するための対策として、最も費用対効果が高く、かつ容易に利用できるだけでなく、すでに気候の影響を受けている現地コミュニティの生活や生態系の変化に対処するものとなります。自然に基づく気候解決策(NCS)は、国家気候行動計画やパリ協定の実現を補完するメカニズムに含まれるべきです。

気候の公式交渉下において、コンサベーション・インターナショナルは、「自然に基づく気候解決策(NCS)」の実施を進めるためにインセンティブを用意する必要性について、各国政府に助言します。パリ協定に基づく、すべての交渉事項のうち、特に野心の引き上げ、適応策、およびイノベーティブな資金動員(国際協力メカニズムを含む)において、自然が持つ重要な役割を反映させるべきです。各国政府は、グローバル・ストックテイク報告書の内容から、今後数年間の国内および国際的な気候行動の指針となるような、具体的な行動目標とコミットメントの作成を提言します。


CIのアプローチ

 

パリ協定の実現には、自然の保全が不可欠です。森林や湿地など、自然生態系を保護し、持続可能に管理すること、また、劣化した生態系を回復させる行動は、平均気温の上昇を1.5度に抑えるために必要な地球規模の行動の少なくとも30%を提供することができます。しかし、自然に基づく気候解決策は現在、世界の気候金融のわずか3%しか受け取っていません。農業、林業、その他の土地利用部門で必要な気候緩和のための資金ギャップは、他の部門(エネルギー、輸送、産業)の気候変動緩和のための資金ギャップよりもはるかに大きいのです。試算によると、パリ協定の目標を達成するためには、自然関連の気候変動対策に年間約1000億~3000億米ドルの資金が必要ですが、これは現在利用可能な資金の約10~30倍に相当します。

自然の力を利用することは、最も効果的で費用対効果の高い気候解決策の一つです。国連の調査によれば、①森林やその他自然生態系の破壊を止めること、②生態系を回復させること、③農地などの管理を改善させること、の3つの行動は、温暖化の原因となる温室効果ガスを削減するために最も効果的な戦略の上位5位に含まれます。自然を保護し、回復させることはまた、2015年に合意された国連の持続可能な開発目標(SDGs)の多くを達成するためにも不可欠です。

気候、生物多様性、海洋の危機に対処するためには、保全行動を増やすことが重要です。自然保護は、世界中の何十億もの人々の生活を直接的かつ実質的な改善につながる行為です。先住民とローカルコミュニティは、土地由来の炭素のほぼ4分の1を含む土地の管理者として、気候変動の最前線にいます。こうしたステークホルダーの重要性を認識し、コンサベーション・インターナショナルは、先住民とローカルコミュニティを、技術訓練の実施などを通じて支援しています。そして、自然を保護する行動が、彼らの暮らしを守ることにつながるような、先住民の権利確保を支援しています。

コンサベーション・インターナショナルは、自然に基づく気候解決策を大規模なスケールで実施するために、政策の提言から、科学モデル、科学ツールの提供、資金調達プラットフォームの仕組みづくりなどを通じて、世界がパリ協定の目標を達成できるよう支援しています。それはつまり、自然に基づく気候解決対策の可能性を最大限に活かして、世界的に展開された世の中を目指すことです。

 
今は、各国が野心レベルを引き上げた、国が決定する貢献(NDC)を提示し、国際社会がより大きな目標と行動に対する追加的な技術および財政サポートを提供する重要な時期です。一部の国では、気候変動に積極的な手段を講じていますが、最も危険な影響を防止し、社会がその影響に適応できるようにするためには、より強力な目標、より多くの行動、そしてより多くの資金が必要です。

COP28の政策要点

コンサベーション・インターナショナルは、世界的な気候行動の一つとして、重要な生態系を保護および回復させるために、政策決定者がアクセスしやすいプラットフォームを用意し、科学的知見の提供を行っています。

私たちは、パリ協定の実施において自然の役割を最大化するため、各国に対し以下のことを呼びかけます:

グローバル・ストックテイク報告書が示した、自然に基づく気候変動対策(NCS)、低炭素農業への移行、人権に基づく自然保護アプローチが、パリ協定の目標実現において重要な役割を担うよう政策へ反映すること:

  • 気候問題と生物多様性問題の解決を目指す世界目標達成のために、2030年までに自然の喪失を食い止め、状況を逆転させ、化石燃料の迅速な段階的廃止を進めるための、具体的な行動提案を含む野心的な目標を設定すること
  • 各国が国内の気候行動計画に気候変動の影響に適応し、緩和するため、自然に基づく気候解決策(NCS)を導入した具体的な目標の設定、政策策定、行動計画を組み込むこと
  • 農業、森林、土地利用セクターの気候行動に資金を大幅に拡大するよう強く求める。持続可能な土地管理に適合しない、ネガティブな助成金やインセンティブの撤廃または改革
  • コミュニティ主導による、自然に基づく気候変動対策(NCS)を実施する際、先住民、ローカルコミュニティ、女性、若者、民族少数が果たす重要な役割を認識し、包括的なアプローチと気候行動に対する環境面および社会保障を実施すること

パリ協定第6条に基づく協力メカニズムを通じて、気候目標と資金を結びつける:

  • 国際的な炭素取引に関する主要な第6条メカニズムを最終化し、自然に基づく気候解決解決策(NCS)の拡大に障害となるような事態を回避すること
  • 第6条のすべてのアプローチは、厳格な環境面および社会面の完全性を備え、自然に基づく気候解決策(NCS)を推進するべきであり、その際、先住民を含む広範なステークホルダーを含むべきである。このため、国は第6条のメカニズムの下での使用を不当に妨げる可能性のある要件を課さないよう心がけ、自然に基づく気候対策を奨励すべきである

新しい”シャルム・エル・シェイク-農業と食料安全保障の気候行動実施に関する共同作業(SJWA)”を効果的に構築し、農業セクターにおいてネイチャー・ポジティブな気候行動を加速させる

  • SJWAワークショップが、各国が長期的に協力して農業における野心的な気候行動を促進し、COP 27で合意された目標を達成するかを焦点を当てる
  • 多様な意見が含まれるように、国々と市民社会からの非公式の意見交換と対話に十分な時間を与えるSJWAワークショップを計画する

気候政策策定プロセスに先住民とローカルコミュニティ(LCIPP)の意見が反映されること:

  • 国と先住民との共同開発モデルを一貫して適用し、UNFCCC政策策定プロセス全体で関与させるための助言を実施すること
  • 第二の3年間のワークプランを実施し、関連する交渉にLCIPP代表が意見を伝える場を用意し、LCIPPの機能の完全な実現を確保すること
  • LCIPPの気候行動への政府による積極的な関与を増やし、特に各国国内の気候政策策定における先住民と地元コミュニティの参加を向上させるための取り組みを促進する

海洋と気候の関連で緊急な行動を維持し拡充する:

  • UNFCCCプロセスの範囲内において、沿岸および海洋自然生態系に基づく気候解決策を含む、技術的および科学的サポートおよび資金導入の呼びかけ、NDCのアップデート、ナイロビ作業プログラムの海洋に関す専門家グループを含む、海洋と気候変動関係者間対話を促進すること
  • 気候資金調達に関する交渉とプロセス内において、沿岸および海洋自然生態系による気候解決策への資金流動を増加および促進すること
  • 生物多様性条約、ラムサール湿地条約、2030年アジェンダおよびSDGsを含む国際政策プロセス全体で海洋-気候行動の連携をサポートすること

適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation)フレームワークに自然と気候脆弱な人々を統合する:

  • 適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation)の中心に、自然や人々、生計向上など置いた包括的な目標を設定する。例えば、「2030年までに、各国の気候変動に最も脆弱な人々や地域の脆弱性を減少させ、将来の解決策の有効性を高め、土地、淡水、海洋の生態系を保護するための100%の人口または地域の長期的な気候適応力と適応能力を向上させる」など
  • 他のグローバルフレームワークを補完する具体的な目標を設定する。自然に基づく気候解決策(NCS)を適応政策サイクルの各段階と調和するテーマまたは考慮事項の一部として含める

気候損害や損失に対処する資金が、自然に基づく気候解決策(NCS)への資金となるようなメカニズムの形成:

  • 経済的な損失への資金を効果的に投入し、自然に基づく気候解決策(NCS)を通じた対応に焦点を当てること
  • 時間の経過とともに気候適応力が構築されるような気候解決策に資金を優先的に提供し、将来の損失と損害に対処するための未来の解決策の効果を高めることを意識すること
  • 発展途上国が損失と損害に対応するために迅速に資金にアクセスすることができ、同時に適応力を構築するために必要な準備と能力構築への十分なサポートを受けることを確保すること