REDD+社会・環境スタンダード

 

REDDやREDD+は、社会・環境面で大きな効果をもたらすと期待されている反面、先住民族をはじめ森林に依存して生活する人々を中心に、負の影響についての懸念も報告されています。

REDD+社会・スタンダードは、REDD/REDD+が社会・環境へ与える負の影響を回避し、人権問題や貧困削減、生物多様性の保全に貢献するように設計していくためのツールとして、CCBAとCARE Internationalが先導して開発しました。気候変動枠組条約や生物多様性条約の国際交渉で、REDD+に関して、環境面、先住民族の権利などでセーフガードが求められています。本スタンダードがその一助となることが期待されています。

気候・地域社会・生物多様性プロジェクト設計スタンダード(CCBスタンダード)」が、特定の土地を対象にして行うプロジェクトのためのスタンダードであるのに対し、「REDD+社会・環境スタンダード」は、行政が実施するREDD+プログラムに適用されることを想定しています。REDD+プログラムが社会・環境面の重要な課題に対処する包括的な枠組みを作りあげ、REDD+を設計するためのガイダンスや、報告のメカニズムを提供することを目指しています。

本スタンダードは、2009年よりネパール、タンザニア、エクアドル、リベリアで、幅広いステークホルダーの参加のもと、準備されてきました。コミュニティーのためのコンサルテーションも行われています。2回のパブリックコメントも実施され、第1版が2010年6月に発表されました。本スタンダードは、現在ネパール、エクアドル、タンザニアなどにおいてパイロット実施されています。 

スタンダードの構成

本スタンダードは「理念」、「基準」、「指標」から構成されています。「理念」はスタンダードの「意図」に当たるもので、望まれる成果を表現したもので、検証の対象ではありません。8項目設定されている。「基準」は、「内容」に当たるのもで、理念を実現するために必要な条件です。各理念の下に、3~7項目、合計34項目が設定されています。「指標」は、定性的あるいは定量的な変数で、基準が満たされたかどうかの検証に使用されます。

理念と基準は全ての国に一様に当てはまりますが、指標は各国の状況に応じて、設定されることになっています。各国における指標設定を支援するために、「指標の枠組み」が示されています。各国で開発された指標は、国際的なレビューを経ることで一貫性を担保することとなっています。

モニタリング、報告、検証(MRV)についても、ステークホルダーの参加、当事者意識、透明性などを確保しながら、常に改善を促すような方法を検討しています。指標と同様、MRVも各国の状況に応じて開発されることとなります。

パイロット国での実施状況(2009年、UNFCCC COP15でのサイド・イベント報告より)

エクアドル政府が推進する「ソシオ・ボスケ・プログラム」は、個人土地所有者や先住民族が居住する森林地域を、ボランタリーな保全合意書の締結に基づき保全、モニタリングし、実施に基づく報酬を支払うことにより、貧困地域である森林地域の保全と社会・生物多様性保全上の相乗効果の発揮を生みだすことを目指し開発されました。プログラムとして、国内の4百万ヘクタールの原生林を保全し、エクアドル政府のREDD+プログラムとして統合されることが前提とされている。プログラムの効果を図るための指標を、CCBA・CAREとともに開発中です。

ネパール政府は自国内の雇用促進を目指し、地域社会との協働による森林管理・再生事業(Community Forestry)に基づくREDDプログラムを計画中です。ネパールはFCPFへのR-PIN提出を終了し、国家レベルでREDDに取り組むことを明言しており、本スタンダードがREDDプログラムの計画と実施への基準として採用されています。