セイコーエプソンとの協働

増加する水需要と複雑化する水リスクに立ち向かう淡水保全プロジェクト

 

「水」は環境だけでなく、社会的にも経済的にも大きな影響力を持つ自然資源のひとつです。私たちの日常生活だけでなく、産業活動においても極めて重要な水を将来にわたって守るため、コンサベーション・インターナショナルはセイコーエプソンと協力して世界各地の水保全プロジェクトに取り組んでいます。


限られた「水」への需要は増加の一途をたどり、今後も増え続けると予測されています。その一方で、人口増加や産業発展、気候変動による水不足、水質汚染や悪化、水ガバナンスと規制の課題、基盤が整っていないインフラ、脆弱な淡水生態系など、さまざまな水リスクが指摘されています。

セイコーエプソンは、将来の水リスクへの意識を広げ、水リスクを分析・評価して取り組むべき拠点を特定し、水資源に貢献する自然生態系の再生を支援しています。自社の操業拠点のみにとどまらず、拠点の外である流域やサプライチェーン全体を視野に入れて取り組むことは、ビジネスの持続可能性や新たな機会につながるだけでなく、生物多様性保全や淡水生態系に頼って暮らす人びとにも貢献します。

※地域の水リスクを、水量、水質、規制・評判の観点で評価することが可能なグローバルツール
 Aqueduct( 世界資源研究所(WRI))

 

 


プロジェクトがもたらすもの


淡水生態系の回復と再生

都市部に水を供給する水源地となる森林から地域にとって重要な川の流域まで、豊かな水を育む生態系を回復させます。
水質改善

水源地の回復に取り組むと同時に、清潔で安全な水を提供できる基盤を整えます。
コミュニティのレジリエンス強化

森林や流域生態系の再生は、気候変動や災害などへのレジリエンスを強化するとともに、地元の生計向上に貢献します。


3つの淡水生態系
(プロジェクト対象地域)

 

■フィリピン・バタンガス州■
 カルンパン(Calumpang)川の流域管理と再生

© Conservation International / photo by Sterling Zumbrunn
インドネシア、マレーシア、フィリピンの間の約90万平方キロメートルの海域に広がる、世界でもっとも豊かな海洋環境として知られるスールー・スラウェシ海域にあるバタンガス州とミンドロ島の間にベルデ島海峡があります。カルンパン川流域はルソン島南部のバタンガス州最大の流域で、約70万人の生活を直接支える、ベルデ島海峡に通じる重要な水路の一つですが、深刻な汚染と急速な都市化によりカルンパン川流域は危機的な状況に直面しています。地下水の供給や森林資源といった生態系サービスの提供に欠かせないランドスケープであるにも関わらず、流域の生態系サービス提供能力は低下しています。流域の劣化によって水循環や水質に悪影響をもたらしており、流域の効果的な管理と再生が急務です。 
 

水を供給する流域生態系の回復を目指し、再生が必要な地域を特定し、保全上の課題に現実的に取り組むための再生計画を策定します。さらに包括的な取り組みとして、実施すべき対策の方向性を定める統合流域管理計画を策定します。また、この取り組みを持続可能なものにするために、地方自治体や環境天然資源省(DENR)とともに流域生態系の再生に取り組みます。

 

■インドネシア・西ジャワ州■
 水源地の回復、水質改善を目指す森林再生

© Conservation International/photo by Yakonias Thonak
西ジャワ州はインドネシア国内でもっとも人口が多く、約5,000万人が暮らしています。首都ジャカルタの生活用水など年間231億リットルの水を供給する重要な水源地がありますが、農地転換や都市化に伴って森林減少が急速化し、水資源の量や質が低下しています。人口増加による需要拡大で地下水の過剰汲み上げによる地盤沈下も深刻です。

加えて、西ジャワ州の人びとに水を供給する上で重要なチタルム川は、生活排水や産業排水によって汚染が進み、あらゆる水の問題を解決するためには水源が枯渇した上流の水源涵養機能を取り戻し、より豊富で安全な水資源を確保する必要があります。

コンサベーション・インターナショナルは、現地コミュニティと協力し、荒廃が進むチタルム川の上流域で環境再生型かつ生計向上にも貢献するアグロフォレストリーを用いて森林再生を実施し、持続可能な水資源の保護へ向けた政策や、下流域の水質改善へ向けたアクションプランの策定に取り組みます。

 

■ブラジル・パラー州■
 先住民族の居住区における水源地の回復や水質改善に貢献する森林再生

© CI Brazil

アマゾンは、地球上に残る最大の熱帯林で、地球上の淡水の20%に相当する水が存在する場所です。3,000万人の人びとが自然資源に頼って暮らしていますが、毎年250万ヘクタール以上(東京都の約11倍の面積)の森林が消失しています。アマゾンは今まさに「Tipping Point(転換点)」に差し掛かっており、このまま森林減少が続けば地域のみならず、地球規模の気候にも影響を与えるといわれています。その影響はすでに顕在化され始めており、2023年、2024年と歴史的規模の干ばつが続いたことでアマゾンの川が干上がる事態も発生し、水資源確保のリスクが高まっています。金採掘や農業などによる水汚染リスクも高い一方で、350以上の先住民族グループを含む地域の住民たちは食料や飲料など、生活に必要な多くの資源を森や川に頼って暮らしています。 

ブラジル・アマゾンの中でも特に森林減少が進み、消失リスクに直面する地域を対象に、「自然の番人」であるカヤポ先住民族と協力し、地域に伝わる伝統的なアグロフォレストリーを組み合わせ、水循環と水源涵養の鍵となる熱帯雨林生態系の再生に取り組みます。また、地域の人びとの生活に欠かせない川の保全活動や流域生態系の再生に取り組むことで、持続的な水資源の保全に貢献します。