HYLEAランドスケープアプローチ

アンデス-アマゾンをつなぐ生態学的コリドーで進むコーヒープロジェクト

 

コロンビアは「生態系のゆりかご」


この地域はアンデス山脈とアマゾン熱帯林入り口をつなぐ位置にあり、その地形的特徴から生態系コリドーとして重要な役割を果たすと共に、独自の貴重な生態系が見られます。

Huila(ウィラ)県はコーヒーの生産に適した気候や自然条件で、質の高い「Huilaコーヒー」の生産地です。しかし、地域には他に際立った産業がなく、小規模貧困農家がコーヒー生産地の拡大を続け森林が点々と切り拓かれ、森林の連続性が失われてきました。特にここ10年はHuilaにおけるコーヒー栽培地は10%拡大し、森林減少が急速に進むと同時に、生物多様性の損失、水資源の枯渇や土砂崩れなど様々な負の連鎖を引き起こしています。また一方で、近年の気候変動の影響がコーヒー生産やコーヒー生産に依存する人の生活に大きな脅威となっています。


 

生態学的コリドー全体の保全を目指すランドスケープアプローチ


このような状況に対し、Andean-Amazonianコリドーではランドスケープレベルでの保全プログラムが実践されています。

生物多様性条約会議COP16でも注目された「ランドスケープアプローチ」は、従来のプロジェクトや企業の取り組みが”点”の取り組みであるのに対して、地域(=面および空間)全体の保全を視野に入れていることが特徴です。特に森林や自然生態系の保全は、個別に実施してもその他の隣接地域で環境破壊が行われたり、地域の優先政策が異なれば効果は損なわれるため、広域での協働体制が不可欠となります。
HYLEAでランドスケープアプローチが成功している大きな要因として、農村人口の74%がコーヒー産業に従事しているため、現地政府が持続的なコーヒー生産とそれを支える環境保全に強いリーダーシップを発揮していること、加えて、Huilaでは持続可能なコーヒー調達に向けた企業の知見が蓄積していたことが挙げられます。また、政府、企業、コミュニティを繋げる、地域に根差したNGOも大きな役割を担っています。

 



Huilaのサステナブルコーヒープログラム


Supply Shedプログラム


ランドスケープレベルでの保全が進む中で、Huilaでは同地域からコーヒー豆を調達する企業が連携する画期的な取り組みが始まっています。これまでは、個々の企業が別々の(しかしそれぞれ似通った)サステナブルコーヒープログラムを展開してきたのを、共通の基準で実施しようというものです。共通の基準を設けることで、企業が個別に取り組む労力やコストが省かれ、その分保全やCO2削減、地域社会への貢献を高めることが可能になります。

コーヒーの生産現場においてサステナブルな取り組みが行われつつも、CO2削減の測定に関して手間やコスト面から実施されていないケースが多く、Supply Shedのような共通の基盤を設けることで、より中小企業も自社のCO2削減の貢献が可視化できるようになります。また、インセッティングによる自社スコープ3のCO2排出削減としての検討も可能になります。

Supply Shedプログラムは2025年末頃の実質的スタートを目指し、将来的には他の地域にも応用することを視野に入れています。

 

現在の状況

インパクト&スケール 小 →

Supply Shed プログラムが目指す将来像

インパクト&スケール 拡大!

Impactsmall

・個々の企業がサステナブルプログラムを考案/実施​

・CO2削減の測定/検証を個別に実施(orコスト高で未実施)​

・ダブルカウンティングのリスク​

・農家への支援内容がバラバラ、不平等感/不信感

・地域で企業がサステナブルプログラムを共有​

・CO2削減の測定/検証は地域で共有ベースのものを利用​

・中小企業も参加しやすくなる​

・農家支援の統一性が高まり、より平等感/信頼感

 

精選プロセス改良の支援

 

コロンビアでは、コーヒー精選は大半が各農家毎に水洗処理方式(ウォッシュド)で行われ、大量の水消費のほか、排水による環境汚染や廃棄物の問題があります。​

HYLEA PACTでは、企業からの支援をプログラム化し、Huilaの小規模コーヒー農家に対して、Ecomill (水とエネルギーの消費を大幅に減少)、Green filter (有機物による汚水浄化設備)、Compost center (果皮の廃棄物を肥料化)など複数の選択肢から1つの購入支援(費用一部負担)を行っています。

 


コーヒー豆1kgの精選に使用する水の量

 

Chanell式の伝統的なミル
(80-120L)

伝統的なミル​
(40-60L)

Ecomill
(20-30L)

 

~Huilaは水ストレスが高く、水資源の保全は最重要課題~

 

水洗式の工程で生じる排水は酸性でメタンガスを含んでいるため、適切に処理されないと環境汚染を引き起こします​。

水洗処理後のコーヒーチェリー残渣からはメタンガスが発生します。(一方でメタンガスは回収/再利用も可能です)​


支援額は一農家あたり800-900USD程度で、すべての農家への支援は大きなコストになります。

一体このコストは誰が負担するべきなのでしょうか。

日本で美味しいコーヒーを安く飲める裏側の事情にも目を向けてみませんか?