チリとペルー沖の深海探査で、100種以上の新種を発見か

海底山脈の秘宝を守るために

2024年5月4日
投稿 Mary Kate McCoy

 

最近、チリとペルー沖で行われた深海調査は、広大な海底山脈系の秘密を発見するものでした。それは、この地域の保護強化をこれまで以上に強く求める根拠を示すことになりました。


研究者たちは、4,500メートル以上も潜れる水中ロボットを使って、チリ、ペルー沖合のサラス・イ・ゴメス海嶺とナスカ海嶺に生息する、100種以上の新種を発見した可能性があると報告しています。これらの海嶺は、南東太平洋に広範囲にわたって伸びています。

「この発見は、私たちを驚かせました」と、今回の調査の主任科学者であるエリン・イーストンは語ります。「これほど多くの新種を発見するのは、ほとんど信じられないことでした。ある場所では、数メートルごとに遭遇したことのない種を見つけていました。」

これらの新種候補には、現時点で知られている種がたった1種しかいないウチワサボテンのようなウニや、とげとげの殻と小さな目玉を持つヤシガニ、おそらく数千年前にさかのぼると思われる古代のサンゴ、透明な「ガラス」イカ、そして中には珍しく鮮やかな色のものを含む、おそらく30種もの新しい深海海綿などがいます。研究者たちは、サカナの一つが鮮やかな赤色のヒレを使ってまるで手のように海底を移動する様子も観察しました。 研究者チームは、これらの生物が実際に科学的に新種かどうか確認するため、遺伝子解析を行う予定です。

 

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発見された新種のひとつ、ヒレを手のように使って海底を「歩く」魚 © SCHMIDT OCEAN INSTITUTE


1ヶ月間わたるこの深海調査は、シュミット海洋研究所(Schmidt Ocean Institute)が主導し、コンサベーション・インターナショナル、ブルー・ネイチャー・アライアンス、公海サンゴ礁保全連合(Coral Reefs of the High Seas Coalition) からの資金提供を受けて実施されました。調査では、10の海底山脈を探査し、その中には初めて訪れた場所もありました。

これらのユニークな生態系が生まれたのは、南から冷たい海流、北からは暖かい海流が流れ込むことや、豊富な栄養素のおかげです。このような環境は、海底山脈で生きるために高度に特化した種を生み出しました。科学者たちはまだその謎を解き明かし始めたばかりですが、例えば、近くの海嶺に生息する種が互いに近接しているにもかかわらず、なぜこれほどまでに異なるのかという疑問も含まれます。

「私たちは、これらの深海の生物多様性ホットスポットについてまだ多くのことを知りません」とイーストン氏は述べました。「しかし、私たちが知っている一つのことは、これらの海底山脈で起こっていることは、より大きな海洋生態系に直接的につながっているということです。」

 

NEW SEA SPONGE SPECIES

この探検では、30種の新種の海綿が発見された可能性がある。© SCHMIDT OCEAN INSTITUTE


例えば、マグロ、サメ、ウミガメなどの回遊性種は、産卵や餌の獲得 (あるいは餌になることを避けるため) にサンゴ礁のような海底山脈の生息域に依存しています。

「今回の調査では、多くの海底山脈にわたって、ほぼすべてのサンゴの種類で卵を発見しました」とイーストン氏は述べています。「つまり、何らかの生物、おそらく魚が繁殖のためにこれらのサンゴに依存しているということです。もしサンゴが消えてしまったら、どのような連鎖反応が起こるのでしょうか?」

LIKE SQUAT LOBSTER

このスクワット・ロブスターのように見える種、海山に生息する多くは未知のものであった。© SCHMIDT OCEAN INSTITUTE


科学者たちは、サラス・イ・ゴメス海嶺とナスカ海嶺の並外れた生物多様性は、海洋保護にとってかけがえのない機会を提供すると主張しています。チリとペルーはすでにこの地域に海洋保護区を設置していますが、これらの取り組みでは海嶺の大部分が保護されていないのが現状です。この海底山脈は、ヒマラヤ山脈よりも長い約3,000キロメートルにわたって連なっており、その70%以上は、どの国の管轄権にも属さない「公海」と呼ばれる区域に広がっています。これまで、遠隔地にあることが幸いし、海底山脈は多くの人為的な影響から守られてきましたが、深海底採掘、汚染、乱獲といった脅威が迫りつつあります。

海洋保護活動家は、昨年国連で承認された公海条約が、国際水域を増加する脅威から守るための新しい海洋保護区を作るのに役立つことを期待しています。そして、サラス・イ・ゴメス海嶺とナスカ海嶺は、海洋環境において最も高い固有種濃度が確認されている地域の一つであるため、保護を検討すべき優先順位の高い区域の一つになるべきだと主張しています。

「得られた情報は、この地域の既存の海洋保護区の継続的な管理のための科学的根拠となり、公海部分での新しい保護区創設の基盤を築くでしょう。公海に対する脅威は、個々の国で独立して対処できる問題ではありません。ある場所での我々の行動は、他の場所にも大きな影響を及ぼします。我々は国際社会として一致団結する必要があります」とイーストンは話します。