ユニリーバとの取り組み

パーム油の生産地で、人と自然のために永続的な変化を生み出すために

 

パーム油(アブラヤシから採れる植物油)は、パンやお菓子、そして化粧品や洗剤まで、スーパーで扱われる商品の約半分に使われています。しかし、この非常に多目的で使いやすいパーム油の生産は、森林減少の主な原因でもあります。

世界で400以上のブランドを展開するユニリーバは、コンサベーション・インターナショナル(CI) とCIのインドネシア法人であるコンサバシ・インドネシア(Konservasi Indonesia:以下KI)とパートナーシップを組み、人と自然の双方に恩恵をもたらすパーム油の持続的かつ伐採ゼロの供給システムを作り上げ、産業を変革させようとしています。


私たちの役割

 

コンサベーション・インターナショナルとKIとユニリーバはインドネシア、北スマトラの小規模農家たちを支援し、森林生態系を健全に維持することができる、持続可能なパーム油の生産に取り組んでいます。中でも、タパヌリ・セラタン県(数千人の自作農家がパーム油の生産に関わっている地域)を中心に活動しています。ここで私たちはパートナーと共に、生産性を上げながらも森林への負荷を減らし持続的な農業を可能にするための地元農家への研修を行っています。さらに現地グループが森林再生活動に参加したり、政府による保護森林の管理技術向上を支援する機会も生んでいます。  

プロジェクトでは、政府の計画、民間セクターの投資、市民コミュニティなど、多くのパーム油関係者の様々な分野の取り組みが向上することを目標に活動しています。私たちは、Coalition for Sustainable Livelihoods (持続可能な生活のための連合、CSL)の参加を通して、持続可能なパーム油生産の取り組みが政府の支援と連携して、調整され、人と自然に対してより強力で長期的な影響を与えるよう支援しています。 


数字で見る進捗状況

 

 

1000人のアブラヤシ小規模農家に技術支援を行い、内800人がRSPO認定されている 

2つの零細農家組合を設立し、パーム油農家の生産と収入の増加を支援

違法に植えられた159ヘクタールのアブラヤシの木を在来種の森林へと再生し、現地パートナーが35年間の管理許可を取得

12万7,000ヘクタールにおよぶ保護区の森林管理向上を支援 


見えてきた成果

 

© Conservation International/photo by Aristya Tri Rahayu

■生産 - 環境にやさしいパーム油生産を通して、小規模農家の生活を向上させる 

ユニリーバ、コンサベーション・インターナショナル、KIは、インドネシア地方政府と2つの地元農業協同組合と協力して、タパヌリ・セラタンの4つの区域(アンコラ・セラタン、アンコラ・サンクヌア、バタン・トル、ムアラ・バタン・トル)で農業に従事する800人のアブラヤシ農家が、「持続可能なパーム油のための円卓会議 (RSPO, Roundtable on Sustainable Palm Oil)」 の認証を取得できるよう支援しています。この認証取得へ向けた過程において、アブラヤシが環境に負担をかけずに栽培されていることが保証され、農家たちは認証済みとなったサステナブルなアブラヤシの売り上げから得られる、追加的収入など利益を得ることができます。 

プログラムに参加している農家は、これまでに土壌の維持方法や収穫の技術、有機堆肥化と施肥のやり方、そして自分たちの農地とその周りの環境を管理することの大切さを学んでいます。いくつかのアブラヤシ農家は、プラグラムを実践してから生産量が2倍になったという報告もあり、農家たちはすでにプログラムから受ける恩恵を目の当たりにしています。 

本プロジェクトでは、2023年12月までに800の小規模農家がRSPOの認証を取得しています。この成功により、地域の他の小規模農家の持続可能な生産を拡大することが期待されています。 

 

© Conservation International

■再生 - 持続可能な生計への転換

私たちは保護区内において、違法にアブラヤシが植えられた地域に持続可能な代替生計手段を提供しています。KIは、違法なアブラヤシ畑を、農林業混植など、合法的な土地利用方法へ転換するよう、長きにわたりコミュニティと協力してきました。

2022年6月、リア二エイト村の森林農家グループが、環境森林省より林業許可を与えられ、保護区内の作物の管理と持続可能な生産が合法的に行えるようになりました。その後今日に至るまで、KIは、地域の農家や住民に在来種の植え方や維持の方法を実践型の研修方法を用いて行っています。また、農林業混植用の苗木を育てるためのコミュニティ用苗園も設立されました。これまでに、合計22,000本以上の苗木が植えられています。

改善した土地の所有権と多様化した森林農法の生産システムは新たな収入源を発展させ、さらに単作物に頼らないようにすることでレジリエンス(回復力)が構築され、住民たちは恩恵を受けることができます。

 

© Conservation International/photo by Reja F. Rinaldi

■保護 -森林生態系に関する政策と管理体系の強化

タパヌリ・セラタン県は、タパヌリオラウータンやスマトラタイガーなど、象徴的な生き物の棲みかとなる大事な森林生態系です。ユニリーバとコンサベーション・インターナショナル、KIは、現地自治体と協力し、視察と管理の改善を通して、これらの大事な地域を守ろうとしています。私たちは野生動物にとって重要な生息地を特定するため、カメラトラップを設置し、また、気候変動を引き起こす炭素を大量に貯留している森林地帯を特定しました。私たちの分析によると、アブラヤシの生産用に指定されている土地に価値の高い地域が176,502ヘクタールあることが分かりました。これはロンドンよりも広い大きさです。これらの結果を踏まえ、KIではタパヌリ・セラタン政府へ協力して、技術的支援を提供し、持続可能なアブラヤシの生産と環境保護戦略を政府公認とするための方針設計を支援してきました。

ユニリーバからの支援により、私たちは「多用途森林計画ツールキット」を開発しました。タパヌリ・セラタン保護地域の保護と生産のバランスをとる新たな方法を模索し、北スマトラのより良い森林管理に必要なツールを提供することで、このキットは政府関係者らが森林管理計画を修正し、強化するのに役立ちました。現地政府とこの地域のパートナーや現地住民との取り組みは、2018年から127,000ヘクタール(1270平方キロメートル) の公有地の伐採率を約55%削減しました。 

 

© Conservation International/photo by Aristya Tri Rahayu

■協働 - 持続可能な生産、保全、再生に向けた取り組みを調整し、拡大するために

ユニリーバとコンサベーション・インターナショナルは、持続可能な生産、保全、再生に向けた取り組みにおいて、「Coalition for Sustainable Livelihoods (CSL)」の参加を通じて、協働をパートナーシップの柱の一つとしています。CSLは、多様なステークホルダーを集め、タパヌリ・セラタンのようなランドスケープ・イニシアチブからの教訓や成功事例、アプローチを共有し、優先事項を一致させるためのプラットフォームです。CSLは、官民セクターの連携を強化することで、政府プログラムや政策の推進を支援し、北スマトラ州とアチェ州で事業を展開する企業のサプライチェーンを持続可能なものにすることを目指しています。

ユニリーバは2019年以来、CSLの暫定運営委員会の積極的なメンバーであり、CSLプラットフォームを支援するための基資金を提供しています。この支援には、ステークホルダーとのエンゲージメント促進、共通指標の合意形成、CSLのガバナンスと運営構造の強化などの取り組みが含まれます。また、ユニリーバは、コンサベーション・インドネシアとIDH(※インドネシアのグリーン貿易財団)とのパートナーシップを通じ、タパヌリ・セラタンとアチェ・タミアンにおけるCSLイニシアチブも支援しています。